高齢者の口腔機能低下が全身状態やQOLに与える影響が注目されており、歯科医療においても
単なる補綴治療に留まらず、口腔機能の維持・改善を目的とした包括的な支援が求められている。
特に、「食べる機能」の回復は、患者の栄養状態や心理的側面にも直結する重要な課題である。
本症例では「食事が食べられない」という主訴に対して義歯新製と同時に歯科衛生士が歯科医師の指導のもと舌の運動機能を中心とした口腔機能訓練を継続的に実施した。
その過程で患者本人および家族の協力が非常に積極的であり指導内容を日常生活に取り入れる努力が訓練成果に直結したと考えられる。
結果として治療前より検査値の向上が認められ患者の主訴も改善できた。
さらに患者自身の「食べたい」という意欲を高めることもできた。
義歯の治療だけでなく歯科衛生士による継続的な機能訓練が患者の自立支援や生活の質の向上に貢献し得ることを示唆できた症例である。